保険学雑誌
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東日本大震災特集号
地震保険における国の「公的」役割
-「自助」と「公助」の論理-
大塚 英明
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2012 年 2012 巻 619 号 p. 619_113-619_132

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抄録

雲仙岳噴火,阪神淡路大震災など比較的最近の巨大災害以降,とくに憲法上の論議として,私的財産への公的補償の根拠が問題としてクローズアップされてきている。原則として,私的財産には自己責任主義が徹底されるから,国がその損害を補償する場面はごく限られている。とくに自然災害による損害の場合,現行憲法には直接的にそれによる個人財産損害の公的補償を基礎づける規定はない。それにもかかわらず被災者救済の見地から,住宅再建などにおいて公的支援を実施しようとするとき,これをどのように根拠づけるか。それが憲法論議の難題の一つとなる。これに対して,地震保険における国の再保険事業については制度創設時から所与の仕組みとして,ある意味で安直に認知されてきた。地震保険が「私保険」として把握されるため,この再保険には「公的」給付としての認識が完全に欠如してきたように思われる。その点を疑問視し,再検討の必要性を提言する。

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© 2012 日本保険学会
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