保険学雑誌
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【査読済み論文】
金利変化がソルベンシーIIとソルベンシー・マージン基準に与える影響
王 美久保 英也
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2014 年 2014 巻 625 号 p. 625_1-625_28

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抄録

2016年から欧州で導入予定の健全性指標「ソルベンシーII」は将来,日本でも導入される可能性がある。
しかしながら,構造が複雑でアクチュアリアルな保険実務と直結していることもあり,当学会でも同基準への移行が保険業界全体に与える影響などについてはあまり議論されてこなかった。
そこで,本稿では,日欧の2つの健全性基準を資産・負債両面に反映できる保険会社モデルを開発し,移行後の最大のリスクである金利リスクが両基準に与える影響を検証する。
結果は,(1)低金利局面ではソルベンシーIIとソルベンシー・マージン基準の健全性水準は共にイールドカーブの変化に対し同方向に変化するが,平均金利局面,高金利局面では2つは逆方向に動く,(2)健全性が相対的に悪化する高金利局面では自己資本が重要となるが,自己資本の健全性水準に寄与する度合いは高金利局面では低下する,ことが判明した。
現行のソルベンシー・マージン基準からソルベンシーIIに移行する際には,これらの指標特性を十分理解するとともに,資産負債のデュレーション格差の圧縮や予定利率の引き上げ抑制などリスク管理が重要である。同時に円滑な移行が実現するようソルベンシーIIの指標を日本に適合できるように見直すことも重要となる。

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© 2014 日本保険学会
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