保険学雑誌
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〔経済・経営・商学系〕
環境リスクファイナンスの提案
-琵琶湖の全循環停止リスクを対象として-
久保 英也
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2015 年 2015 巻 630 号 p. 630_43-630_60

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抄録

地球の温暖化やアジア,アフリカ地域の急速な経済成長に伴う環境保護の必要性の高まりがその対応財源の安定的確保を国際的な最重要課題にしている。従来の国際機関からの補助金や地方自治体の税を中心とした経常財源に加え,急速かつ大規模な環境悪化に対して,金融市場からの資金調達も視野に入れる必要がある。本稿では,環境リスク顕在時の金融市場からの資金調達である「環境リスクファイナンス」を提案すると共に具体的に京阪神1,400万人の飲料水や近畿圏全体の生態系に多大な影響を与える琵琶湖の「全循環停止(表層部と深層部の水循環が停止し,酸素が湖底に行きわたらない事態)リスク」を対象とする。
結果は,金融市場からの資金調達が可能であり,その調達コストは1.5-3%程度であることが判明した。このスキームは日本のような先進各国以上に経済成長優先で環境保護に資金が回らない発展途上国にとってより重要なスキームである。今後,環境リスクファイナンス市場の拡大に向けた調達実績の積み上げと市場の整備が求められる。

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