保険学雑誌
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【査読済み論文】
現代ポートフォリオ理論を用いた生保の最適資産ポートフォリオの提案
久保 英也楠田 浩二
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2015 年 2015 巻 631 号 p. 631_33-631_63

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抄録

生命保険会社の資産運用は超長期の国債などの運用対象の不足や負債の簿価評価など保険会計の特殊性,そして,資産運用の基礎理論の不在などから困難に直面している。本稿では,制約の多い生命保険会社の最適資産配分の理論モデル(楠田(2013,2014))を基礎に,現実の生命保険会社のデータを用いた実証分析を行い,最適資産配分を求めることを目的とする。
同モデルは,(1)従来の1期間モデルではなく多期間モデル,(2)ナイトの不確実性の明示的な取り込み,(3)保険債務を「国債類似証券の受動的空売り投資」と見做し資産ポートフォリオへの組込み,(4)近似解析手法を用いた実証に耐えられる構造,などを特徴とする。分析過程では,カルマン・フィルタによる観測不能な平均金利等の推定や非線形連立方程式の諸数値解法等の計量技術を持ち込み,最適ポートフォリオの解を導出した。
その結果,最適ポートフォリオは生命保険会社の現実のポートフォリオと大きな乖離はなかったことが判明した。

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© 2015 日本保険学会
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