保険学雑誌
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「グローバリゼーションと保険業」―創立75周年記念大会シンポジウム―
損害保険業のグローバル化への対応と課題
鈴木 衆吾
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キーワード: M&A, ERM, グローバル人材
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2016 年 2016 巻 632 号 p. 632_99-632_114

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抄録

近年,日本の保険会社による海外進出やM&Aが活発に行われ,グローバル化が加速していると言われている。日本の大手損害保険会社の海外進出の歴史は長いが,2000年代以降,国内市場の成熟化を背景に,M&A等の活用により本格的に海外ローカル市場への進出が行われるようになった。現在では,ポートフォリオ分散の観点からも海外事業の拡大が推進されるようになり,国内損保大手3グループともに,海外事業を成長領域と捉え,今後も海外事業のウェイトを高めていくとしている。
また,国際監督規制・資本規制において,グローバルに統一的な監督基準や資本要件策定の動きがある他,本邦監督当局を含めた各国の監督当局間の連携が強化されている。さらに,資本の十分性(ソルベンシー水準)と効率性(ROE)のバランスをどのように取るかについても,より重要なテーマとなっている。
このような環境下,損害保険会社の海外事業における主な課題として,(1)ERMの推進・高度化,(2)ガバナンス態勢強化,(3)グローバル人材の育成・確保等があると考えられる。特に人材に関しては,一部の国・地域において,Fit & Proper基準およびその運用が強化される流れも見られており,グローバル人材育成の重要性は益々高まっている。

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© 2016 日本保険学会
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