保険学雑誌
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「自動運転が引き起こす保険業界の変貌とその対応」—平成29年度大会共通論題—
自動運転が引き起こす保険業界の変貌とその対応
-共通論題における論点の整理を中心にして-
石田 成則
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2018 年 2018 巻 641 号 p. 641_31-641_51

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抄録

自動運転技術は,わが国の戦略的イノベーションの主柱となっている。こうした技術の社会的な便益は大きいものの,従来とは自動車の運行・走行概念が大きく異なるため,それに見合うハード面とソフト面に跨る環境の整備が必要になる。こうした環境整備が技術進展やその実用に追いつかないと,社会的な軋轢を生じ,新技術への社会受容性は高まらないことになる。
こうした社会受容性を高めるために,自動運転に伴うリスクへの対処,事故発生時の責任と補償のあり方,そして技術だけでは対応できない問題(トランス・サイエンス問題)への解決策を検討した。
結論として,事故発生時の補償については,従来の自動車損害賠償保障制度を活かしつつ,民間保険商品によってそれを補完すべきことを主張した。また,トランス・サイエンス問題への解決には,テクノロジーアセスメントに基づいた「コンセンサス会議」の実施により,一般市民の参画性と納得性を高めることを提起した。併せて,民間保険商品の補償内容を工夫することで技術選別を行うことの有用性を指摘した。

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© 2018 日本保険学会
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