保険学雑誌
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がん保険約款の実務上の諸問題
佐々木 光信
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キーワード: がん保険, 約款, 裁定審査会
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2018 年 2018 巻 642 号 p. 642_151-642_171

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抄録

生保協会裁定審査会取扱い事例概要におけるがん保険関連の給付事例を参照し,約款の運用を巡る問題を確認した。責任開始前がん診断確定無効規定と90日不担保規定に関する申立ては少なく,悪性新生物の該当可否と「がんの治療を直接の目的とする入院」という給付約款の解釈に関するものが多かった。前者は,腫瘍分類基準適用の問題であったが,裁定審査会は踏み込んだ見解を示していない。一方,後者の約款解釈を巡る申立ては,がん治療に関連する合併症の申立て事案が主であった。これに対し裁定審査会は,給付妥当と判断する場合の一定の解釈を示している。いずれの判断も,医学的専門性に依存し,事案における約款解釈が契約時の合意に含まれるとは思われない。それ故に,契約時の情報提供と適切な約款の作成が,より重要である。今回,がん保険について報告したが,他の特定疾病保障商品にも共通する問題として認識された。

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© 2018 日本保険学会
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