保険学雑誌
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地震デリバティブ取引と保険制度の相克
鬼頭 俊泰
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2019 年 2019 巻 645 号 p. 645_111-645_132

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抄録

地震デリバティブ取引は契約の条件設定次第で損害保険と同様のリスクヘッジ機能を果たすことができる。一方,地震デリバティブ取引では,補償金の支払いと損害の発生とは関係がないため,契約において設定された支払条件を満たさない場合には,たとえ損害が生じていたとしても補償金が支払われることはない。そのため,地震デリバティブ取引契約においては,契約締結時に設定された支払条件が満たされているのか否か,あるいは契約において設定されていない内容が問題となった場合にどのように当該契約内容を支払条件との関係で合理的に解釈するのかが問題となる。

本稿では,地震デリバティブ取引契約約定書の契約内容の解釈だけでなく,地震デリバティブ取引の役割・機能にも言及している仙台高判平成25年9月20日を手掛かりに,地震デリバティブ取引が企業のリスクヘッジ方法として妥当性を有するものであるのか検討し,地震デリバティブ取引の支払条件次第では,企業の望むリスクヘッジ方法として不十分となる可能性が存在することを示した。

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© 2019 日本保険学会
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