保険学雑誌
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「大規模自然災害とリスクファイナンス」—平成30年度大会共通論題—
事業継続計画の役割と今後の課題
野田 健太郎
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2019 年 2019 巻 645 号 p. 645_41-645_47

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抄録

近時の災害の多発などにより企業の事業継続計画(BCP)が注目されるようになった。BCPは当初,防災対策の様相もあったが,最近では経営戦略の一環として位置づけられるようになった。BCPに関しては,議論が始まって10年以上が経過し,その政策や効果について検証すべき時期にきている。大きな課題としては,中小企業の策定率は依然として低い状態にあること,策定したものの実効性に疑問があるものが多いこと,資金面を含めた経営戦略との連携が足りない,といった課題があげられている。

企業が事業を継続していくためには,オペレーショナルな対策に加え,緊急時の資金面での対応(資金繰り,損益,バランスシート)も含めた幅広い視点での対応が求められる。これらの点は広義の BCPの範疇に入るが,対応が十分とはいえない。

今後,保険や新しい金融手法などリスクファイナンスの分野の対応をより強化することで,大規模自然災害による事業中断といった大きなストレスがかかる場面においても,生き残ることができる対応力を身に着け,最終的には自社のビジネスモデルや強みを確認することにつなげることが期待される。

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