保険学雑誌
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重過失免責
—損害保険関係の裁判例の検討—
結城 亮太
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2019 年 2019 巻 647 号 p. 647_69-647_99

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抄録

重過失免責については,保険法制定に伴う約款改訂により,損保の傷害保険と生保の災害関係特約の不統一が解消され,損保内でも傷害保険と自動車保険の人身傷害保険の文言の統一が図られた。

民事上の重過失については,昭和32年最判が失火責任法の「重大ナル過失」を「ほとんど故意に近い注意欠如の状態」と解しており,保険法上の重過失についても,養老生命共済契約の免責事由たる「重大な過失」に関する昭和57年最判の調査官解説は判例上重大な過失の意義は確立されているとする。

もっとも,保険法上の重過失の意義については,様々な学説があり,下級審裁判例も昭和32年最判の立場を踏襲するものばかりではない。

約款改訂後に免責事由たる「重大な過失」が争われた傷害保険及び人身傷害保険の裁判例を検討すると,故意の間接状況証拠は認められないが,保険者を免責すべきと思われる事案も存在することから,通常の意味での重過失と解すべきである。

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© 2019 日本保険学会
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