保険学雑誌
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シンポジウム第2部「くらし安全安心な“街づくり”と保険」
反社会的勢力排除の要請と保険の役割
—とりわけ密接交際者の排除に関する判断基準について—
遠山 聡
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2020 年 2020 巻 648 号 p. 648_109-648_137

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抄録

反社会的勢力による被害防止という社会的要請を受けて,各種保険約款にも反社会的勢力との関係遮断を目的とする反社会的勢力排除のための規定が設けられ,保険契約者や被保険者等が,暴力団やその構成員のみならず,暴力団関係企業や共生者と呼ばれる反社会的勢力との密接な交際関係を有する者に該当する場合にも,保険者は該当する契約の解除をすることができることが定められている。このうち,とりわけ反社会的勢力と「社会的に非難されるべき関係」を有していると認められる場合の解除の可否について,約款条項に求められる条項の明確性という点を中心に,他分野(行政における入札参加の指名停止基準や銀行の普通預金規定等)における反社会的勢力排除条項の規定や解釈などとも比較検討を行った。共生者(反社会的勢力に対する利益提供やその不当利用)に限定しない解除規定は,柔軟に解除事由の該当性を判断できるメリットがある反面,裁量の幅が大きいことによる外延の不明確さがあることは否定できない。さらに,警察からの通報や情報提供に連動する形で排除が進むことになるが,その効果として解除が過大な制裁とならないかも懸念されるところである。

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