保険学雑誌
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シンポジウム第1部「インシュアテックと保険・保険業の未来」
インシュアテックと保険規制のあり方
根本 篤司
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2020 年 2020 巻 648 号 p. 648_35-648_51

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抄録

インシュアテックの進展は,デジタル技術にもとづく金融イノベーションの一翼を担い,フィンテック社会におけるリスクの引き受け手としての役割を期待されている。インシュアテックの特徴は,従来の保険制度では付保できなかったリスクをカバーし,デジタル技術を用いて保険の限界を克服するところにある。インシュアテックの普及は保険会社の経済的保障の提供機会を拡大する。

情報系ベンチャー企業を含むインシュアテック企業の市場参入は,インシュアテックの発展に欠くことはできない。参入規制の緩和は保険事業のアンバンドリング,リバンドリングを加速化し,市場競争の進展をもたらす。他方,インシュアテックによるリスクの特性評価が,バッド・リスクの保険消費者を市場から排除してしまう可能性も生じうる。

これらの問題意識にもとづき,本稿はインシュアテックの進展をめぐる保険規制に関する議論を整理,検討する。結論として,インシュアテックの促進には参入企業の資本要件の緩和と,消費者利益保護の観点から保険消費者の利用機会の担保と残余市場の設置によるセーフティネットの拡充,情報公開の取り組みが必要であることを指摘した。

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