2021 年 2021 巻 652 号 p. 652_75-652_89
本稿は,超高齢化社会が到来する中で,日本経済が持続的成長を実現するために,年金や保険などの金融に関する知識(リテラシー)を高めることの重要性を指摘する。具体的には,近年,老後や将来に対する不安や不確実性が高まっている結果として,家計の予備的貯蓄が増加しており,最適な消費・貯蓄行動が制約されている可能性を問題視した。とくに,こうした不安や不確実性を引き起こしている要因のうち,単に年金や保険,さらには資産運用についてのリテラシー不足に起因する部分が相応に存在している点に注目している。金融教育は,金融リテラシーを有意に高める機能を有しており,平均寿命が長期化する中で必要となる老後に向けての資産形成にも有用である。学校教育や社会人講座などの場において,産官学金が積極的に連携・協働し,対面のみならず,オンライン・デバイスなども有効に活用して,金融教育を日本全国で格差なく拡充していくことが望まれる。