保険学雑誌
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古典生保数理の有効性
—1770年代の英国エクイタブル生命におけるバリュエーション実務の構築について—
田中 浩一
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2022 年 2022 巻 658 号 p. 658_93-658_120

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抄録

1770年代の英国エクイタブル生命において,プライスとモーガンによる世界最初の生命保険会社のバリュエーションが実施されるに至った。このバリュエーション実務の構築を通じて,責任準備金概念を使用した統一的な契約価値評価に基づく生命保険会社の全体の財政状況の検証とそれに基づく経営の枠組みが姿を現わしたことになるが,本稿では,それとともに,その枠組みを実行可能とするために必要な大量の計算について,当時の計算力でもタイムリーに算出可能とする計算の体系が考案されたことを示す。この計算の工夫において,純粋数学の活用が効率性につながり,体系的数学が有効に保険数理へ持ち込まれているため,ここで古典生保数理が完成したと言えると主張する。また,既存の研究によりながら,当時において,この古典生保数理の事例が組織運営における定量的評価に基づく管理やその管理における計算などの知的労働の効率化の効果を示す事例とみなされ,他分野へ影響したことも指摘する。

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