2016 年 27 巻 1 号 p. 25-33
乳酸菌は、その保健効果が注目されることによって、ほかの腸内細菌に比べて研究が進んでいる。 腸管常在性の乳酸菌は、これまでの分離情報を見る限り一定の宿主特異性が存在するように思われるが、そのような宿主特異性を示す理由についてはあまり関心を持たれてこなかった。我々は、ヒトとゴリラの共通祖先が持っていたと推定される祖先型ビフィズス菌に近いと考えられる Bifidobacterium moukalabense、祖先型乳酸桿菌に近いと考えられる Lactobacillus gorillae の分離に成功し、新種として発表した。本稿では、これらの細菌のゲノム情報や表現型形質からヒト科霊長類の進化と腸内共生乳酸菌の適応について考察した。また、同じく祖先野生種が家畜化される過程における腸内共生乳酸菌の適応についても考察した。