2000 年 45 巻 4 号 p. 155-167
公共図書館の会的・政的・経済的位置づけを検証した「公共図書館調査」の中から図書館利用についての調査報告書であるベレルソン(Bernard Berelson)のThe Library's Public:A Report of the Public Library Inquiryを検討した。公共図書館におけるオピニオン・リーダーへのサービスというベレルソンの主張がいかにして導かれたのかをベレルソンの研究背景を中心に考察した結果, ベレルソンは, 1940年代の公共図書館の利用状況を浮かび上がらせるために, コミュニティの公共図書館以外の情報源を程に入れながら公共図書館の分析を行っていたこと, レポートにはコミュニケーション研究の手法と理念が反映していたことが明らかになった。ベレルソン・レポートの提言はかならずしも公共図書館の践の場へダイレクトに影響を及ぼさなかったものの, レポートの主張は公共図書館の利用についての本的な論旨を含み, 公共図書館論としてきわめて重要である。