2009 年 55 巻 3 号 p. 141-154
本稿では,これまで研究対象とされてこなかった大学以外の研究機関に所属する研究者に焦点を当てて実施したメディア利用実態調査の結果を報告する。調査の目的は,1)大学以外の研究機関に所属する研究者の情報行動様式や意識を明らかにすることで,大学所属研究者のそれと同一であるかどうかを検証すること,2)利用者の利用実態や意識という観点から情報提供機関に対する評価を試みること,である。ライフサイエンス領域の研究者で国公立研究所もしくは企業に所属する者を対象とし,2005年3〜4月に郵送調査,2008年3月にインターネット調査を実施した。結果として,大学以外の研究機関に所属する研究者は大学所属研究者と比較して,研究活動において必要とするメディアが分散する傾向にあるが,学術雑誌の利用が最も多いという意味では変わらなかった。加えて,研究者の情報入手に対する評価は勤務先の資料提供環境(特に職員の有無)によって変化することが示された。