日本図書館情報学会誌
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論文
1950年代前期の沖縄における学校図書館改革の受容 : 指導主事永山政三郎の構想と第1回教育研究大会の見解を中心に
杉山 悦子
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2015 年 61 巻 2 号 p. 96-111

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抄録

本研究では,1950年代前期における沖縄の学校図書館理解を考察するために,1953年に『琉球文教時報』で発表された琉球政府文教局指導主事永山政三郎の学校図書館振興論と,1954年度に開催された第1回教育研究大会報告を検討した。その結果,沖縄教育界では文部省の『学校図書館の手引』(1948)と「学校図書館基準」(1949),そして教育学者松本賢治の学校図書館論を参照していた可能性が確認された。文部省の情報は設備の標準指標として理解されていた。全人教育機能としての学校図書館観は松本論との類似性がみられた。様々な情報を受容する一方で,教師の研修機関として学校図書館を捉える意向や,"物心両面の隘路"を学校間で互助し合う協議会構想もみられた。しかし「日本」からの情報は,沖縄教育界に理想を抱かせた反面,法と設備の欠如を否応なく現場に自覚させ,焦燥を駆り立てるものでもあった。

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© 2015 日本図書館情報学会
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