大正元年から『目録編成法』刊行直前の時期の日本における目録を巡る学説について分析した。その結果,辞書体目録と分類目録は対立するものとして捉えられていた明治期と異なり,和田万吉,今沢慈海などの図書館関係者は,分類目録を辞書体目録に組み込むという考え方に移行していたことがわかった。また,明治期に引き続き冊子体目録とカード目録を比較する学説も見られたが,カード目録が肯定的に捉えられた。さらにシーフ目録が和田によって紹介された。その他,目録における仮名遣い,著者名の表記のあり方,雑誌記事索引の重要性,児童用の目録論などが語られ,主記入論争へとつながる動きとして,田中敬による,和洋図書両方を著者標目で統一することの主張が見られる。大正期における目録の目的論は利用者を重視したものであった。その背景には当時の図書館界の利用者を重視する姿勢があった。