2023 年 69 巻 1 号 p. 1-19
漢籍利用者の研究行動を聞き取るインタビュー調査の結果から,漢籍利用者の利用者タスクと,利用者タスクを支援するエレメントを明らかにする手法を開発した。ドメインモデルを検討した上で,前稿で報告したユースケースからエレメントを抽出する方法と,インタビュー時の研究者の発言を意味内容ごとに分割したものに対して利用者タスクおよびエレメントを付与する方法を試行した。いずれの方法でも,エレメントは,目的(必要とされたエレメント),手段(利用されたエレメント),結果(取得されたエレメント)の3 群に分けて利用者タスクと対応づけた。どちらの方法でも利用者タスクを特定することはできるが,エレメントの特定については後者のほうが詳細な結果が得られた。本研究の成果は,データ作成機関ごとのエレメントの選択や,利用者タスクの支援という観点からの漢籍目録データの評価に役立てることができる。