2026 年 72 巻 1 号 p. 19-36
本研究は,VR図書館内のブラウジング行動を視線データに基づいて探索的に分析したものである。被験者25名に対し,構成の異なる5種の3D書架環境を用い,注視位置や注視時間を計測し,質問紙調査を行った。結果,現実と同様に上段への注視が長い傾向がある一方,VR環境では下段にも比較的注視が向けられやすく,特に面陳表示によって注視が誘導される効果が確認された。超高書架・円柱型のVR特有の書架では,満遍なく書架が注視されるとは限らず,評価が分かれた。読みたい図書の選択には,書架上の位置のほか,背表紙の視認性の高さや主題への興味関心の強さが影響していること,VR環境では身体的負荷が軽減される一方で視覚的負荷やVR酔いの課題があることが指摘された。本研究は,身体的行動を伴わない「背表紙や表紙を眺める」行為に限定されているが,セレンディピティを誘発するVR図書館設計に向けた基礎的知見となる。