主催: 日本ロービジョン学会, 視覚障害リハビリテーション協会
過去20年ほどの間に、社会福祉サービスとしての生活訓練を受ける人の層が大きく変わって来たという印象を持つ。国立更生援護施設の生活訓練課程では、かつては利用者の70_%_から80_%_が視覚をほとんど活用できない人たちであったが、今日ではその割合が逆転しているように感じられる。この傾向は視覚障害リハビリテーション(以下、視覚リハ)サービスを提供する様々な現場で共通に見られることではないだろうか。
各現場のスタッフはその現実に遭遇し、ロービジョン特有の課題を改善するためのサービス提供の必要性を認識していると思われるが、十分なサービスが提供されているとは言いがたいのが現状であろう。このことは、国内の視覚リハ専門職養成の現場でロービジョン・サービスに関する教育が十分に行われてこなかったことに起因しているともいえる。しかし、サービスを必要とする多くの人がロービジョンであるという現実を踏まえるならば、すでに現場で従事しているサービス提供者がロービジョン者の持つ多様なニーズに応えられるようになる必要がある。そのためには、現場にいる訓練士が積極的にロービジョン者とのコミュニケーションを通して想像力を高め、科学的な視点から課題解決のための多くの試みをし、それによって得られた知見を学会等で互いに公開し、多くの学ぶ機会を持つことが必要だと考える。
本講演では、演者が視覚リハ現場で考察してきたロービジョン者の歩行訓練上の課題をもとに、現在の職場である学院において取り組んできたロービジョン歩行の困難課題の分析と対処法に関する研究内容を報告し、ロービジョン歩行について議論するための話題提供を行いたい。