日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
セッションID: OIII-2
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一般口演 III
Point-Lights Walkerにおける性別を特徴づける運動成分の解析
*麻野井 千尋長田 佳久
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抄録

目的  歩行する人物の身体各部位に装着した光点のみから構成した動画像をPoint-Lights Walker(PLW)と呼ぶ。麻野井・長田(2006)はPLWの四肢の振り子型運動から「人らしさ」や「性別」などの心理的属性が知覚される条件を検討した。その結果,性別判断が可能となる振り子型運動の振幅は「人らしさ」に比べ小さかった。この結果は,性別判断には四肢とは異なる部位の動きが関与している可能性を示唆する。本研究では,複雑で不規則な動きを示す肩と腰に着目し,周波数解析によりこれらの動きの主要成分を抽出し男性と女性の相違点を検討した。

方法  異なる周波数と振幅が合成された波形から,その構成成分を抽出する方法に周波数解析がある。本研究では,男女のPLWにおける水平方向の運動成分をMatlabにより作成したプログラムを用いて解析した。肩と腰の運動軌跡をそれぞれ30Hzでサンプリングした。これらの時系列データから平均トレンドを除去後,最大エントロピー法(次数50)を用いて周波数成分を抽出した。

結果  PLWの肩と腰の主要成分は男女で異なっていた。男性PLWの肩の動きには低周波数成分が多く含まれていたが,腰の動きは速く小さかった。一方,女性PLWの肩と腰の動きにはともに低周波数成分が多く含まれていた。

結論  本研究では,周波数解析を用いることにより歩行する人物から知覚される心理的属性を物理的次元で定量的に記述することに成功した。この解析法により,歩行する人物の肩と腰の相対的な動きの違いが性別判断の手がかりとして重要であることが示唆された。本研究の成果は,限られた生体情報から効率よく対象の特性を識別する機構を解明し,視覚障害者の対象識別能力の向上に寄与すると考えられる。

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© 2006 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
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