主催: 日本ロービジョン学会, 視覚障害リハビリテーション協会
本研究は、ロービジョン者を対象として視認性に大きく関わる基本特性である1.コントラスト感度、2.色の類似性領域を計測し、実験的な検討から見やすい視覚表事物の設計に関する規格作成および視覚機能のデータベースの確立を目的としている。今回は色の類似性領域について報告する。
実験はJIS準拠の管理色票13×9cmのもの16色を基本色として用いた。それぞれの基本色に対し「似ている(類似)」または「同じ」であるかを同じ大きさ・仕様の103色のテスト色票を用いて記録した。また「類似」の判断の手がかりを掴むために各テスト色票のカラーネーミングも行った。照明は昼白色の調光可能な蛍光灯を使用し、明所視条件:500 lx、薄明視条件:3 lxとした。両眼で計測を行った。
晴眼者(若年者)のデータと比較すると、ロービジョン者は基本色に対する類似性領域はより広くなる傾向にある。特に5G5/8(緑)は薄明視条件で領域の拡大が顕著であり、基本色と同じ明度5の平面上が最も広くなっている。またテスト色票が基本色と同じでも「類似」と答える場合が多く、色弁別の機能が低下している様子が見られる。一方カラーネーミングによる同色名の領域は、5R,5B,5G,5Yなどの各色軸を中心に、明度の上下にわたって広がっているが、類似性領域に比べて色差の広がりは少なく、全体として色の知覚が大きく混乱しているような様子は見られない。また類似性領域と比べると、明所視と薄明視での領域の差も少ない。
今後は被験者数を増やし、視野や視力・混濁の程度等などの被験者の眼の状況と色の類似性の判断との関連について検討したいと考える。