主催: 日本ロービジョン学会, 視覚障害リハビリテーション協会
【目 的】
近年、高齢者や障害者など社会的弱者に対応した視環境計画が求められているが、ロービジョンと光環境との関係性のうち、特に、夜間における視覚障害者の歩行に関する研究は、未だ十分とはいえない。本研究は、前報のアンケート調査に基づき、その内容に関連付けた現地歩行調査を実施して、夜間歩行における障害物や有用な対象事物と、光環境との関係性を明らかにする。
【対象ならびに方法】
大阪府下の比較的高齢なロービジョン者5名を被験者として、普段よく利用する経路を同行し、夜間歩行時におけるランドマークとなるもの、障害物、歩く際に気をつけていること等のインタビューとその位置を記録した。また、ランドマークや障害物等の現地状況をビデオ、写真撮影すると供に、対象物及び対象地点の輝度、照度の物理量を測定記録した。
【結 果】
1)有用な対象事物:「商店・看板」「自動販売機」「信号機」など、同じ場所で常に光を発するものを視覚的な手がかりにしている。加えて「白線」「縁石」「壁」など、周囲との輝度対比が大きいものは、役立つことが分かった。2)障害となる対象事物:自動車からの安全を守るために設置された車止めや、柵が歩行の妨げになっている。昼間とは異なる夜間の光環境において、視覚的に確認できない個所があることが分かった。3)対象物の照度と輝度の関係:視標としている対象物と、その周辺の照度と輝度を測定した結果、路面照度10 lux以下、対象物輝度1 cd/_m2_以下で、視環境および、対象物評価が悪くなる傾向を示した。
【結 論】
アンケート調査で指摘された「自転車」「車止め」などの放置障害物の状況と、歩行上の手がかりとなる事物について、その内容を確認した。また、光環境として路面照度10 lux以下、対象物輝度1 cd/_m2_以下で、視環境・対象物評価が悪くなることを明らかにした。