日本網内系学会会誌
Online ISSN : 1883-6801
Print ISSN : 0386-9725
ISSN-L : 0386-9725
白血球の貪食
千田 信行
著者情報
ジャーナル フリー

1961 年 1 巻 p. 15-25

詳細
抄録

1. 貪食するに当って,先ず偽足の細胞膜が異物に接触,粘着する.次いで偽足で異物を取り囲み,それを細胞膜で包む.これが偽足の細胞膜から離断して細胞質内に搬入せられる.
2. 従って,偽足を出すことが貪食の第一条件であり,偽足の表面張力の低いこと,また偽足の細胞膜が異物に粘着し易いことは貪食に適している.偽足の表面張力は非常に低く,粘着性が高い場合,すなわちPinocytosisを起し得るようなときには異物に粘着することなく,それを媒質とともに貪食する.
3. 異物の粘着性もまた重要な要因である.殊に大きな異物ではその粘着性が低ければSurface Phagocytosisは行われ難い.
4. 以上の如く貪食は偽足によってのみ進行される.この偽足は顆粒質の表面層に存在する,恐らくアクトミオシン様の性格を持った収縮性蛋白の収縮によって,易流動性形質が押し出されて出来るものである.そしてこの収縮の自由エネルギーはATPである.またATPは細胞膜の表面張力,粘着能の維持に必要である.従って,ATPの産生が低下すれば偽足の活動性,表面張力,粘着能は低下する.要するに貪食はATPで共軛せられたMechano-Chemical Systemで営まれる.
5. エネルギーは減少しても貪食能は必ずしもそれに平行して減退しない,却って上昇する場合がある.それは,貪食能は偽足の発展速度,大きさ,数,単位時間内に出没する頻度,偽足の表面張力並びに粘着能等の偽足の諸要因と異物の性状との相互関係によって左右せられるからである.
6. 細菌貪食後の運命,殊に貪食された菌並びに食空胞の消長,食菌による細胞自体の変化等の位相差,電顕所見について述べた.

著者関連情報
© 日本リンパ網内系学会
前の記事 次の記事
feedback
Top