日本レーザー医学会誌
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原著
腓腹筋の筋収縮に対する低出力レーザー照射効果の波形解析
久保 富洋米津 貴久長尾 明典蛭子 法子木暮 信一松田 芳樹小松 光昭石井 良夫渡辺 一弘
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2008 年 29 巻 1 号 p. 18-25

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抄録

近年,低出力レーザーを用いた治療やその研究に対して大きな注目が寄せられている.おもに神経や筋,皮膚組織が対象とされ,その効果として鎮痛や再生・修復の促進というポジティブな報告がされている.しかし,多数の実験報告や臨床報告はあるものの,その作用機序や効果の最適条件については未だに不明な点が多い.われわれはアフリカツメガエル(♂)の坐骨神経-腓腹筋標本を用いて,その筋収縮への低出力レーザー照射(Nd:YVO4, 532 nm, 100 mW)には振幅の減衰を遅延させる効果があることを報告した.そこで今回は測定した筋の単収縮曲線を(1)潜時,(2)収縮期の長さ,(3)弛緩期の長さの三つの観点から波形解析し,低出力レーザー照射効果が筋収縮のどの部分に強く現れるのかを検討した.実験にはアフリカツメガエルの坐骨神経-腓腹筋標本を用いた.坐骨神経を極大刺激強度(1 ms pulse, 1Hz)で刺激し,誘発される腓腹筋の収縮を張力トランスデューサーを通して記録した.1匹の個体から取り出した2つの標本を用いて,10分間の連続刺激を同時に行い,一方をレーザー照射を加えた実験群とし,他方を非照射群とした.その結果,収縮期の変化において両群には有意差が観測され(p<0.05),照射群の方が収縮期の延長を遅延させる傾向を示した.また,2分間ずつの連続刺激と休止を2回繰り返し,休止期間にレーザー照射を行った実験では,潜時・収縮期・弛緩期すべてにおいて,照射群の方がそれらの延長を有意に遅延させた(p<0.05 or 0.01).以上の結果から,低出力レーザー照射には神経筋標本の興奮収縮連関に対する効果があること,その効果は神経筋接合部の化学伝達への作用というよりも筋収縮機構や筋線維内のATP産生・消費機構への作用が強いことが示唆された.

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