日本レーザー医学会誌
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Print ISSN : 0288-6200
特集「利用拡大をめざした5-ALAを用いたがんのPDD・PDT研究」
悪性脳腫瘍に対する光線力学的療法
ー光感受性物質ALAを用いたPDDとPDTを中心にー
金子 貞男
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2008 年 29 巻 2 号 p. 135-146

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抄録

悪性脳腫瘍の治療予後は現在の医療をもってしてもきわめて悲観的であり,glioblastomaの中間生存日数はわずかに18ヶ月でしかない.悪性脳腫瘍の治療は他臓器の癌と同様に集学的治療によって行われているが,最近の研究で腫瘍の手術摘出率によって生命予後に大きな影響を与えることが明らかになってきた.浸潤部分も含めた腫瘍の広汎摘出によって摘出率を上げることはできるが,脳腫瘍の場合には腫瘍近傍の正常組織をも含めた広汎摘出は手術後に麻痺や言語障害などの重篤な合併症をもたらす危険性がきわめて高くなる.さらに,悪性グリオーマは正常脳組織と肉眼的に似通っており,手術時に区別して腫瘍組織だけを摘出する事は非常に困難である.そこで,正常脳組織と区別して腫瘍組織だけを摘出するために肉眼で区別する方法や,あるいは運動や言語などの大切な脳機能を有している部分に腫瘍組織が浸潤している場合に,腫瘍組織と正常組織を区別して腫瘍組織だけを治療出来る方法を究明することが緊急の課題となっている.
現在,研究の進んでいる光線力学的医療はこれらの課題を解決する大きな手段として期待されている.光線力学的医療とは光と組織内酸素と光感受性物質の三者の光化学反応を医療に応用したものであり,光線力学診断(PDD)と光線力学療法(PDT)を含めた総称である.
私共はすでに250例以上の悪性脳腫瘍にPDDを行い,63例にPDTを行っている.光感受性物質は数多く開発されているが,この論文では特にALAを用いた場合を中心に解説する.
私共の経験を中心に悪性脳腫瘍に対する光線力学的医療の現在の到達点と問題点について以下のような結果を得た.
1)PDDによって腫瘍摘出術中に悪性グリオーマと正常脳組織を肉眼で区別することが容易になり,腫瘍の全摘出が可能になった.それによって生存日数の延長が期待出来るようになった.2)PDTは腫瘍が脳の深部にあって摘出困難な場合や,運動や言語中枢部分に浸潤しているときに腫瘍組織だけを区別して治療するのに有効である.3)光線力学的医療による副作用は殆どない.4)PDDは悪性グリオーマには有効であるが良性グリオーマにはあまり有効でない.5)PDDにおいてfalse-negative,false-positive 所見を認める事がある.6)光の組織深達度に一定の限界があり大きな腫瘍塊に対してPDTの治療効果は少ない.

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