抄録
1990年代に入って,腫瘍親和性物質の投与を行わずとも,内因性の蛍光物質による自家蛍光の強度差を利用して気管支を観察する自家蛍光気管支鏡が開発され,早期癌・異型扁平上皮の局在診断に有用と報告されている.上皮内癌および異型扁平上皮に対する感度は上昇し,従来の内視鏡診断では発見不可能な病巣も同定することができる.自家蛍光診断は癌病変の粘膜上の進展範囲を正確に把握できるため,内視鏡的レーザー治療の際の照射範囲や手術時の気管支切除線の決定に有用である.一方,早期癌と異型扁平上皮の鑑別,あるいはこれらの病変と炎症の鑑別には現在のシステムは不十分であり,今後の改良が期待される.