2015 年 36 巻 1 号 p. 18-24
抗がん剤に耐性を持つ進行前立腺がんの治療は難しく,新たな治療法が求められている.光線力学療法(photodynamic therapy; PDT)は光と光感受性薬剤を用いた治療法であり,その低侵襲性から進行前立腺がんの新規治療法として期待できる.我々の研究グループは,進行前立腺がんへの効果的なPDTを実現するために,薬剤輸送効果を持ち,前立腺がんに対して抗腫瘍効果を発揮することが知られている非ウイルスベクター(hemagglutinating virus of Japan envelope; HVJ-E)に光感受性薬剤であるprotoporphyrin IX脂質(PpIX脂質)を封入し,新規光感受性薬剤「porphyrus envelope」を開発した.本検討では,porphyrus envelopeを用いてホルモン拮抗性ヒト前立腺がん細胞株PC-3に対して,PDTの治療効果,およびHVJ-E由来の抗腫瘍効果の評価を行った.その結果,porphyrus envelopeは約1/30の投与濃度でPpIX脂質単体と同等のPDT効果を有し,更に光照射を行わない場合においても,HVJ-E由来の抗腫瘍効果により直接的な殺細胞効果を有することが確認された.