2017 年 38 巻 2 号 p. 106-113
現在,虚血性心疾患に対しては,内科的に経皮的冠動脈形成術,ステント内挿術や外科的に冠動脈バイパス手術が行われている.ところが,冠動脈が全体に細すぎると,このような手技が不可能なことがある.このような末期的虚血性心疾患の場合には,左室の表面から心筋内貫通孔を開けて,虚血性心筋部を動脈血で循環することによって心筋の虚血をよみがえらせるのではないかと考えた.これが, いわゆる,心筋内血管形成術(Transmyocardial laser revascularization, TMLR)である.1985 年11 月12 日に臨床例で本法単独の世界初の成功例を得た.
次いで,CO2 レーザーを用いる血管吻合である.細い血管吻合には,異物反応を起こす縫合糸を可及的少なくするのが良いのではないかと考えた.その出力は,20-40 mW,照射時間6-12 sec/mm が最も良い条件であった.また,吻合部の耐圧試験や抗張力試験などでも十分に吻合部の強度があることが判明し,臨床例に応用した.吻合部は,冠動脈部をはじめ,下肢の動静脈に多数応用され,好結果を得た.