昭和医学会雑誌
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Monoamine Oxidaseに関する研究 (第54報)
脳MAOに対するアルコール類の影響
青木 秀泰
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1978 年 38 巻 4 号 p. 379-385

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抄録
脳中にはserotoninとtyramineとをそれぞれ特異的に酸化する複数のMAOが存在するといわれている.また, aicohol類に肝MAO活性を賦活する作用のあることも認められている.今回ラット脳mitochondria MAOに対するalcohol類の影響を検討した.ラット腹腔に0.89/kgのethanolを投与すると, serotonin, tyramineのどちらを基質にした場合にも投与1時間後に一過性のMAO活性の増大が認められ, 後, 旧に復し, その後48時間後に再び活性の増大することを認めた.in vitroの実験において, 1Mのethanolは脳MAO活性をserotonin, tyramineのどちらを基質にした場合にも約26%の著明な活性増大を示した.1MethanolのMAO活性賦活機序を両軸逆数プロット法で検討したところ, serotonin基質ではethanolを添加した直線と添加しなかった直線は横軸で交わり, tyramine基質では縦軸で交わった。pS活性曲線, 至適pHは1M ethanolを添加してもserotonin, tyramineのどちらの基質を用いた場合でも相違は認められなかった.この脳MAOに対するethanoiの賦活作用は可逆的であった.
以上のように, serotoninとtyramineを基質とした場合にin vitroではほぼ同等のMAO活性の増大が認められるが, その賦活機構は基質によって異なることが判明した.このことは脳中には少くとも2種のMAOが存在する可能性を示唆している.さらに, in vivoの実験において血中ethanol含量のピークの時期に一致しethanolの直接作用と考えられる, 基質により賦活機構が異なる第一の活性増大のピークと, 血中にethanolを検出できない時期に第二のMAO活性増大のピークが認められた.この第二のMAO活性増大は, 生体内のmitochondria中でのMAO活性の抑制の解除, enzyme induction, mitochondria膜の構造変化等の間接的な作用であると思われるが, この増大機構の解明には今後さらに検討を必要とする.
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