昭和医学会雑誌
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中脳中心灰白質を介してモルヒネによって増大する線条体内ペプチド
蜂須 貢武重 千冬
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1980 年 40 巻 6 号 p. 701-706

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抄録

教室の従来の研究によってモルヒネは内因性モルヒネ様物質を遊離し, 作用を現わすことが想定された.この実験的証明のため, ラットの線条体中のmet-enkephalin (m-Enk) およびm-Enkの代謝物tyr-gly-gly (TGG) を高速液体クロマトグラフィーで測定した.0.5mg/kdgのモルヒネの腹腔内投与後摘出した線条体のm-Enk含量は変化しなかったが, TGG含量は3倍に増加した.上記のモルヒネによるTGG含量の増加は中脳中心灰白質 (PAG) 背側部を破壊すると出現しなくなった.20mg/kgのモルヒネでもm-Enk含量には変化はみられず, TGG含量は1.8倍増加した.Carboxypeptidase阻害剤D-phenylalanineの投与後は, モルヒネによるTGGの増加作用は出現しなかった.上記の結果からモルヒネはPAG以下に作用し, PAGから線条体に到る経路を介してm-Enkを遊離し, TGG含量を増加することが想定された.この想定はD-phenylalanineの作用からも裏づけられた.

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