昭和医学会雑誌
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妊娠後期, 授乳期, 授乳停止後におけるマウス乳腺の電顕組織化学的研究
李 中仁
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1982 年 42 巻 6 号 p. 709-724

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抄録
乳腺の腺細胞における分泌顆粒の産生と放出機構および分泌機能停止後の分泌顆粒とlysosomeとの関連性を検索するために, 妊娠後期, 授乳期および授乳停止後のD.D.K系マウスの乳腺について, PA-CrA-silver法, Chromic acid-PTA法, AcPase法にて電顕組織化学的に観察した.PA-CrA-silver法とChromic acid-PTA法では, 妊娠後期と授乳4日目のマウス乳腺細胞はGolgi装置の肥大とcasein顆粒, multicasein body, 脂肪顆粒の増加をみとめた.casein顆粒とmulticasein bodyの反応陽性周辺部はcomplex carbohydrates, 反応陰性中心部はproteinであることが判明した.multicasein bodyはcasein顆粒数個が互いに融合して生じたものと考えられた.casein顆粒とmulticasein bodyの分泌は開口分泌, 離出分泌の両形式で行なわれる.Golgi装置の凸面から凹面にむかって, gradient染色が見られた.surfaces of microvilliとlysosomeは陽性反応, 脂肪顆粒は陰性反応.粗面小胞体はPA-CrA-silver法に弱陽性反応, mannoseなどの糖がRERにて形成分泌されることを示している.Chromic acid-PTA法の反応物はglycoproteinであるので, RERは陰性反応.授乳停止後4日目の腺細胞ではGolgi装置は萎縮し, casein顆粒, multicaseinbody, 脂肪顆粒の減少とprimary lysosomeの増加が認められた.授乳停止後8日目の腺細胞ではGolgi装置の萎縮とcasein顆粒, multicasein body, 脂肪顆粒の減少はさらに著明であった.primary lysosomeも減少していたが, secondary lysosomeとlysosome消化後のautophagic空泡の増加をみとめた.以上から, 授乳停止後casein顆粒の一部はlysosomeによって分解処理されることが示唆された.
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