昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
成人病における死亡の地理的重心と社会経済的要因の検討
高崎 裕治
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 45 巻 4 号 p. 507-516

詳細
抄録

成人病におけるSMRの地理的重心を求めることにより, 全国的な疾病分布の動向を知るとともに, 社会経済的因子を要約して総合的指標を構成し, これらと各種成人病のSMR及びその推移比との関連性について検討した.1969年から1978年までの10年間における成人病のSMR及び24項目の社会経済的因子の実数を資料として, 都道府県別の平均値, 及び前期5年間から後期5年間への推移比を分析に用いた.地理的重心の偏りから脳卒中は東日本に, 肝硬変は西日本に多く, 他の疾患は東日本にやや多いことが図示された.前期5年間から後期5年間へのSMRの地理的重心の移動は虚血性心疾患が顕著であり, 相対的に東日本でこの疾患による死亡が抑えられていると考えられた.他の多くの疾患の重心の移動も地域差が小さくなる方向へ移動する傾向を示したが, 胃がんと肺がんは依然としてそのような傾向を示していなかった.社会経済的因子の主成分分析により, 第1主成分は第2次産業と消費の大きさ, 及び文化の高さを意味し, 都市化や工業化された状況を指すものと解釈された.第2主成分は第1次産業の大きさを意味するものと解釈された.全死因についてみると男は女に比べて都市化や工業化された環境の影響を受け易く, かつ, それらの作用は疾病全体でみると死亡を改善させる方向へと働いていた.各種成人病のうち, 肺がんにおいて男女とも都市化や工業化された地域に死亡の多いことが示されたが, 女の肺がんによる死亡の方が都市化や工業化の影響をやや強く受けていた.SMR推移比についてみると, 男の全死因と男女の脳卒中で第1次産業の発達した地域におけるSMR推移比が小さく, 全国平均以上に死亡率が減少していた.全国的な都市化や工業化による地域差の解消傾向, 一般に農村型疾病であるといわれている脳卒中による死亡の減少傾向, さらにはSMR推移比そのものの性質が第1次産業の発達した地域での全死因や脳卒中のSMR推移比の低下に影響しているものと考えられた.種々の社会経済的因子から求められた主成分スコアの推移比はSMRやSMR推移比と関連性がみられなかった.従って, 成人病による死亡に対しては都市化や工業化等の社会経済の変化よりも, むしろ都市化や工業化されている程度のような社会経済の大きさの影響の方が現われやすいと考えられた.

著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top