昭和医学会雑誌
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抑うつ評価尺度の精神医学的研究―第II報
―第II報―抑うつ評価尺度の経時的変化とうつ状態の臨床分類との関係
金 英雄稲葉 秀邦押尾 雅友猪狩 中石井 一彦
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1985 年 45 巻 4 号 p. 527-545

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抄録

当教室では昭和39年来質問紙法としての昭大式DRSを用いており因子分析的研究や改訂版DRSの作成 (DRS-S78) 並びに客観的テスト (HRS) の比較検討を行なって来た.著者は今回, 昭和大学病院神経科を受診し, 病因的分類, ICD-9, 笠原木村分類を行なった症例のうち, 統計学的に検討された両テストを初診時より6週までに4回以上実施することのできた152例について, その症状推移による得点を経時的に分析した.そして, 病型別の経時変化とその特徴点について次の結果を得た. (1) 初診時に両テストで高得点を示した因子及び6週間の各因子の推移を加味して4つの経時的分類を行った.この経時的分類とその病因別の分類, ICD-9, 笠原木村分類との関係を究明した. (2) ICD-9は従来の病因分類と合致するプロフィールを持つ疾患は多かった.経時的にみた今回は神経症性うつ病, 退行期うつ病など両テストで同様のプロフィールを示しているものもあるが, 内因性うつ病, 反応性うつ病のように病型によっては客観的テストであるHRSの方が減少傾向が反映されていたりプロフィールが異なっていたものもある.経時的観察でも両テストを併せ用いることの必要性がさらに強まった結果となった.このことは臨床医の診療カルテ記載のみよりもDRS-S78, HRSを併用して評価を行っていくことが精神症状把握を容易にし, 評価尺度の有用性をより明確にすることが明らかとなった. (3) 退行期うつ病は病因的分類において, 独自の立場をとっているものの, ICD-9, 笠原木村分類においては独立した位置づけになく, 経時的分類からみるとICD-9の神経症性うつ病の中に含まれていた.これは従来言われていた退行期うつ病が内因性うつ病に類似した疾患であるという説とは異なっていた.一方, 笠原木村分類ではI型性格反応型, III型葛藤反応型うつ病とプロフィールが類似しており, I型性格反応型とは経時的分類も一致した. (4) 主観客観両テストを用いた症状プロフィールにより異なる病型分類間の類型化が可能であった.それは逆に因子群からのうつ病の分類の可能性を示唆している.情報を推計解析により容易に数量化し, 研究可能なデーターを長年に渡って蓄積することも出来, また従来困難であったが, 異国間, 異文化間の共同研究での比較検討も容易である.また, 主観的テスト全体の評価をすれば, 主症状について, むらなくチェックすることが出来, 症状把握に能率的である.

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