抄録
未熟児の血中総蛋白TP, アルブミンAlb, プレアルブミンPA, レチノール結合蛋白RBP濃度を出生時より日齢34まで経時的に測定し, その栄養学的指標としての意義を中心に検討した.対象は在胎週数25~42週の未熟児新生児64例で, そのうちわけは, I群: 出生体重999g以下の超未熟児12例, II群: 1000~1499gのAFDの極小未熟児10例, III群: 1500~2499gのAFD児29例, IV群: 1000~1499gのSFDの極小未熟児6例, V群: 1500~2499gのSFD児7例である.これらの児はI群を除くといずれも呼吸障害, 感染症, 動脈管開存症などを合併せず授乳困難もなかった.出生時の各種血漿蛋白については, TPおよびAlbが出生体重および在胎週数と正の相関があることを認め, 在胎週数により高い相関を認めた.PAは出生体重および在胎週数と有意の相関を認めなかったが, SFD群はAFD群に比し有意に低値であり, また, 体重からみた胎児発育状態と有意の相関を認めた.RBPもSFD群がAFD群に比し低値の傾向があったが, 有意でなかった.生後早期の各種血漿蛋白については, AFD群が生理的体重減少の影響を受け血中濃度は増加したが, SFD群は逆に減少した.また, TPおよびAlb変化率と体重変化率との間に有意の負の相関を認めた.その後の各種血漿蛋白の変化について調べたところでは, TPおよびAlbが減少傾向を示す1群を除けば有意の変化を認めず, 蛋白カロリー摂取量との関係もなかった.PAは蛋白摂取量が少ない1群を除けば, 蛋白摂取量が29/kg/日を越えるようになると全例有意の上昇を認めた.また, カロリー摂取量とも有意の相関を認めた.RBPは減少傾向を認めた1群を除いては, 各群とも有意の変動は認めず, 蛋白カロリー摂取量との関係もなかった.以上の検討により, 妊娠後期における胎児の栄養学的指標としてPAが最も鋭敏であると考えられた.TP, Albは栄養以外の要因により大きく影響を受ける可能性がある.生後早期には各種血漿蛋白の栄養学的指標として意義は少ないが, それ以後はPAにのみ蛋白カロリー摂取量と関係を認め, 生後の栄養状態を鋭敏に反映すると思われる.TPおよびAlbは指標として鋭敏性に欠け, RBPは蛋白以外の栄養素の影響を受ける可能性がある.