昭和医学会雑誌
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虫垂原発“Mucinous carcinoid”の一例
小倉 享子飯田 善樹九島 巳樹杉山 喜彦田代 浩二
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1987 年 47 巻 5 号 p. 757-760

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抄録

虫垂原発のカルチノイドには粘液産生性をもちmucinous carcinoidと呼ばれ, ときに病理組織学的に腺癌と鑑別が困難なものがある.今回われわれは, 急性虫垂炎で切除された虫垂にmucinous carcinoidを認めた症例を経験したので報告する.症例は38歳男性, 主訴は右下腹部痛, 諸検査にて, 虫垂炎の診断で順行性虫垂切除術が施行された.切除標本先端は腫大, 割を入れると膿が漏出した.虫垂全長の組織標本を作製し検鏡した.先端2cmから根部切除断端約1.5cmの範囲に粘膜から漿膜下層まで粘液産生を有する比較的小型の細胞集団の浸潤を認めた.これら細胞はPAS, アルシアンブルー, グリメリウスが陽性であった.本症例が肉眼的に典型的な虫垂炎であったことを考えると, 虫垂切除材料は根部を含め, できるだけ多数の切片を作製し, 組織学的検査を行う必要がある.

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