昭和医学会雑誌
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松かさ抽出液に含まれる細胞傷害性物質, マクロファージ活性化物質, および分化誘導物質
池田 実徳坂上 宏紺野 邦夫
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1987 年 47 巻 6 号 p. 801-813

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抄録
われわれは, 民間伝承で胃癌等の消化器系癌患者に用いられて来た五葉松 (Pinus parviflora Sieb.et Zucc.) の松かさ抽出液中の生理活性物質の分離法の検討を行って来た.本研究は, この抽出液に含まれる細胞傷害性物質マクロファージ活性化物質, 分化誘導物質の部分精製について報告する.細胞傷害性物質の精製は, 標的細胞のマウスL929細胞への色素取り込みを指標にして行った.この物質の活性は, 松かさ熱水抽出液を順次エーテル, 酢酸エチル, ブタノールで分配するど主としてエーテル層から同収された.松かさメダノール抽出画分をメタノール分配抽出濃縮乾固後シリカゲルカラムクロマトゲラフィーにより約31倍に精製された.マクロファージ活性化物質の精製は, 標的細胞のマウスマクロファージ様株化J774.1細胞の形態変化と、培養液に放出されたヒト骨髄性白血病細胞 (ML-1, U-937) に対する分化誘導活性を指標にして行った.熱水抽出液中の6容エタノールで沈殿しない画分から同収された活性は, 酢酸エチル, ブタノール, 水分配で, ブタノール層に分配され, エダノール中でのゲルろ過 (LH20) によりvoid volumeに溶出された.6容のエタノールで沈殿する非透析性画分の活性は, DEAEセルロースイオン交換樹脂に吸着した.分化誘導物質の精製は, 標的細胞の上記ヒト骨髄性白血病細胞のNBT還元能を指標にして行った.85%エタノール抽出液中の活性は, エーテル, 酢酸エチル, ブタノール、水分配で水層から回収され.エタノール中でのゲルろ過ではvoid volumeの直後に溶出された.熱水抽出液中の6容エタノールで沈殿しない画分から回収された活性は, ブタノールで分配抽出され, エタノール中でのゲルろ過によりvoid volumeからかなりおくれて溶出された.6容のエタノールで沈殿する画分から回収された活性は, 透析性であり, 多糖画分と分離された.松かさから熱水およびカセイソーダで抽出された10種類の多糖には分化誘導活'性は検出されなかった.これらの3種の活性物質は, すでにわれわれが報告した松かさ中の抗腫瘍性多糖, 抗エイズ物質細胞性免疫賦活物質との分子構造相関上からも, 相乗相加作用の上からも注目される.現在これらの活性物質の精製および構造解析が進行中である.
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