昭和医学会雑誌
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特発性大腿骨頭壊死の病理組織学的ならびに骨形態計測学的研究
原 弘明土屋 恒篤堀内 静夫
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1988 年 48 巻 5 号 p. 607-616

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抄録

本研究は大腿骨頭壊死において, 臨床的に硬化帯といわれる骨形成亢進部の動態について検討するために, 骨頭壊死周辺部での新生骨添加を伴う修復反応を観察したものである.検体は人工物置換時に得られた大腿骨頭壊死16例20股であり, 病理組織学的に観察し, あわせてcontact microradiogramにて壊死骨頭の各部位の石灰化の状態を観察した.さらに, 壊死周辺部での病態像を定量的に観察するため骨形態計測学的に観察し比較検討した.また, 同部でのおのおのの骨梁における動的変動を知るため, テトラサイクリン2重標識法を組み合わせて観察した.
組織学的には, 骨頭軟骨下に, (1) 壊死部, (2) 骨壊死と生存域を隔てる線維帯, (3) 骨新生が盛んで添加骨が著しく増量している硬化帯, および (4) 健常部分が観察できた.
壊死周辺の硬化帯では, 添加骨は厚いオステオイドを伴い, オステオイドの表面には膨化した骨芽細胞の配列がみられ, 活発な骨形成が示唆された.骨形態計測を行うと, 硬化帯では健常部と比較して単位骨量が約4倍に増大し, 平均骨梁幅も2倍以上に肥厚していた.さらに, 硬化帯では分画吸収面も分画形成面も健常部に比べ約3倍に増加しており, 骨の形成も吸収もともに亢進していた.テトラサイクリン標識法で観察すると, 硬化帯での標識面が健常部の約3倍に増加しており, 石灰化速度も硬化帯では健常部と比較して有意に速かった.
以上の結果より, 大腿骨頭壊死では, 壊死部周囲の硬化帯で, 骨量の増大, 骨形成・吸収の亢進, 石灰化の亢進がみられ, 自己修復能を有していることが定量的にみとめられた.

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