昭和医学会雑誌
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経穴および非経穴刺激による鎮痛発現に関与する脊髄内オピオイドの違い
羅 昌平菱田 不美池田 尚人西原 寛武重 千冬
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1989 年 49 巻 3 号 p. 295-301

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抄録

経穴を低頻度刺激して出現する鎮痛 (AA) および視床正中中心核外側部か視床下部後部の一部を破壊した後, 非経穴を刺激して出現する鎮痛 (NAA) は, 下垂体の除去によって出現しなくなる.また経穴あるいは非経穴から下垂体に到る脊髄内の中枢経路はそれぞれ異なっている.本研究ではAAおよびNAAそれぞれの脊髄内経路の興奮伝達に関与するオピオイドを検討した.ラット尾逃避反応の潜伏期 (TFL) を痛覚閾として, 鎮痛はTFLの増加率で現した.薬物は脊髄クモ膜下腔に挿入したカニューレを介して, あるいは腹腔内に投与した.Met-Enk, Leu-EnkおよびDynの抗血清を脊髄内クモ膜下腔に投与するとMet-Enk抗血清投与の場合のみAAが出現しなくなった.一方, NAAはDynの抗血清を投与した時にのみ出現が阻止された.さらにκ受容体の拮抗剤Mr2266を腹腔内に投与するとNAAは出現しなくなった.非経穴部を刺激して出現する中脳中心灰白質外側部の誘発電位はMr2266の腹腔内投与で出現しなくなったが, 経穴部の刺激によって中脳中心灰白質背側部に現れる誘発電位には影響は現れなかった.またDynのagonist, U50-488H腹腔内投与でNAAと同程度の鎮痛が出現し, この鎮痛はデキサメサゾンで拮抗された.以上の結果から, AAの脊髄内の伝達に関与する物質はMet-Enk免疫反応性ペプタイドであり, NAAの脊髄内の伝達に関与する物質はダイノルフィンであることが明らかとなった.

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