昭和医学会雑誌
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筋線維構成の筋内部位による相違に関する研究
植竹 照雄
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1989 年 49 巻 5 号 p. 444-453

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抄録

筋線維構成の筋内部における位置的な相違の存否を明らかにするためにカニクイザルの大腿四頭筋およびハムストリング筋各筋の各部位 (近位部, 中央部, 遠位部) における筋線維構成を検討した.研究対象は雌のカニクイザル2頭で, 10%中性ホルマリンにより灌流固定されたものである.各筋の三断面から得られた薄切切片について, Sudan Black B染色を施して三筋線維型, すなわち, 白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維を分別, それらの断面積の計測を行うとともに, 単位面積中の筋線維数を求め, 三筋線維型の比率を算出した.結果は次のとおりである.1) 大腿四頭筋およびハムストリング筋の各部において, 白筋線維比は三筋線維型中最も高く, 40-70%を占めたが, 中間筋線維比および赤筋線維比については筋, および個体により一定しなかった.2) 筋線維型比の部位差については, 大腿四頭筋では白筋線維比は遠位部が, 赤筋線維比は近位部がそれぞれ他よりも高い傾向がみられ, 外側広筋, 内側広筋, 大腿直筋においては著明であった.3) 一方, ハムストリング筋群では白筋線維比は近位部が, 赤筋線維比は遠位部がそれぞれ他よりも高い傾向がみられ, 大腿二頭筋, 固有半膜様筋において明らかであった.4) ハムストリング筋中, 副半膜様筋では大腿四頭筋と同様の傾向がみられた.5) 各筋における筋線維断面積は一般的に三筋線維型ともハムストリング筋の方が大腿四頭筋よりも大きく, 検査した筋の中で最大は半腱様筋で, 大腿二頭筋がこれに次ぎ, 最小は中間広筋であった.6) 筋線維断面積を各筋の部位別に比較すると一般に三筋線維型とも遠位部は他の部位より小であったが, 半腱様筋のみは遠位部と近位部の間には差がみられなかった.
以上のことから筋線維構成においても筋内部で機能的分化が現れることが考えられた.

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