昭和医学会雑誌
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東洋医学への薬理学的アプローチ
―施灸, 施鍼および漢方方剤黄連解毒湯の免疫抑制マウスへの影響の比較検索―
笠原 多嘉子呉 育興王 〓桜井 淑子小口 勝司
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1990 年 50 巻 5 号 p. 530-536

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抄録

免疫抑制薬cyclophosphamideをpicryl chloride感作後4日目に腹腔内投与することにより, 遅延型過敏症 (delayed type hypersensitivity, DTH) 抑制モデルを作成し, 免疫抑制状態における東洋医学的療法の影響を検索した.東洋医学的療法としては, 生体直接刺激法の施灸, 施鍼と経口的全身投与法の漢方方剤黄連解毒湯を用いた.実験には6~9週齢のddY系雄性マウスを用い, 生体刺激部位はヒト命門穴相当部位とした.施灸は女10mg/bodyを5個に分けて行い, 施鍼は鍼を30°の角度で約2mm刺入し, 低頻度通電刺激を行った.黄連解毒湯は自製し, ヒト投与量の5倍量を投与した.DTHは第1次, 第2次の2回の免疫反応について耳腫脹を測定した.Cyclophosphamideにより耳腫脹は有意に抑制された.これに対し, 施灸, 施鍼および黄連解毒湯のpicrylchloride感作前3日間処置では有意な改善作用が認められた。しかし, 惹起前3日間処置では影響はみられなかった.このような免疫応答時において, 脾臓の白脾髄領域の量的変動が認められた.以上, 施灸, 施鍼および黄連解毒湯は免疫抑制状態を改善する方向にのみ作用し, 既に免疫が抑制されている場合には, それ以上の抑制は生じないことが認められた.

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