昭和医学会雑誌
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血中アンチトロンビンIIIが高値を示した肝細胞癌の一剖検例
崔 蓮耿 啓達国村 利明諸星 利男神田 実喜男
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1991 年 51 巻 1 号 p. 112-115

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抄録

症例は61歳男性.主訴は全身倦怠感, 体重減少.血液検査上, 肝胆道系酵素およびAFPの上昇を認めアンチトロンビンIIIも高値を示していた.腹部CT, US, Angioにて肝全体にびまん性肝癌が認められた.5-FU, MMC, IL-2の投与を行ったが効果なく肝不全にて死亡したが, 最後までAT-IIIは高値を示していた.剖検の結果肝臓は重量43409と著明に腫大し, 表面は凹凸不整で, 割面にて肝全体に径1cm程度の腫瘍結節がびまん性に認められた.組織学的には索状型, 一部偽腺管型を示すEdmondsonIII型の肝細胞癌であった.免疫組織学的に腫瘍細胞は抗アンチトロンビンIII抗体に陽性を示しており, 腫瘍細胞のAT-III産生が示唆された.一般に肝細胞癌において血清AT-III値はむしろ低値を示す傾向にあり, 異常高値を示した症例は文献上認められない.肝細胞癌と血清AT-III値との関係, あるいはその産生能については今後の症例の積み重ねが重要と考えられた.

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