昭和医学会雑誌
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狭窄性直腸癌に対する術前・術中の工夫
岡 壽士石田 康男小嶋 信博
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1991 年 51 巻 1 号 p. 90-96

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抄録

(目的) 狭窄性大腸癌は重篤な全身症状を伴わないが, 手術時の腸内容は術後の合併症の発生に重要な因子となる.腸内容が臨床上いかなる影響を及ぼすかを縫合不全の発生, implantation, さらに腸管内の細菌叢からとらえ, それらの対策として直腸プロステーシス, 術中腸管内洗浄の工夫について述べる. (対象) 1975年から1989年4月までの大腸癌493例のうち大腸癌イレウスは54例, 10.8%を占めた.重篤な全身症状を伴わないが腹痛などの単純性の腸閉塞は29.6%に及んだ.蓄便のみが20.2%を示した. (結果) 1.細菌叢の変化.大腸癌症例の術前, 術中, 術後の経過中の細菌叢の変化は, 糞便中の嫌気性菌が健常人の1/10から1/100に減少しており, IVHやEDにより正常化されていることがわかった.2.縫合不全の関連.術前, 腸管の前処置を行ったものと行われなかった2群で, 縫合不全の発生頻度は大差なかったが, 実験的には外翻一層連続縫合において非洗浄群で64.2%の発生頻度が認められた.下部直腸の狭窄に対して術前直腸プロテーゼを留置し, 腸管内を空虚にして, さらに術前に行われなかった症例に対しては術中腸管内洗浄を行っている.3.口側および肛門側の細胞診術中腸管内洗浄で, 肛門側と口側の洗浄液の細胞診で40%という高率でclassrv以上が検出された. (考察) 臨床および実験的結果から, 狭窄性大腸癌症例に対しては非経口, 中心静脈あるいは経管栄養を約2週間行う.また下部直腸症例にたいして直腸プロテーゼを行い, 術前に腸管内の減圧を経肛門的に行う.さらに術中の操作として腸管内の洗浄は全例に行う.閉塞性結腸癌および狭窄性の直腸癌も術前および術中の腸内容の除去は細菌叢の正常化, 吻合不全の発生頻度の低下およびimplantationの予防からも有効である.

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