昭和医学会雑誌
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妊娠中の血中各種ステロイドホルモン値の日内変動
宮下 芳夫赤松 達也小松崎 一則秋山 敏夫河村 栄一齎藤 裕矢内原 巧
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1991 年 51 巻 3 号 p. 274-280

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抄録
Cortisol (F) の分泌に日内変動があることはよく知られているが, 妊娠中に増加するestrogenの前駆物質であるdehydroepiandrosterone (DHA) -sulfate (S) およびpregnenolone-sulfate (P5-S) などの副腎性ステロイドの日内変動については明らかでないため, 正常妊娠初期, 中期, 末期の母体末梢血中のこれらのステロイドについて日内変動を検討した.対象は, 8~41週の正常妊婦9例で, 9時より3時間ごとの8回, 留置カテより採血し, P5-S, DHA, DHA-S, Fの変動を, Gas chromatography-Mass spectrometry (GC-MS) 法にて測定した.なお, 副腎性ステロイドのACTHの反応性を見るためにACTH負荷テストを行なった.妊娠中の一各ステロイドの日内変動は, DHA-Sを除き, 振幅は異なるが妊娠週数にかかわらず一定の傾向が認められた.FとDHAは6時に一致したピークがあり15時~18時に最低になった.DHA-Sは, 夜間低値であった以外は一定の傾向は見られなかった.P5-Sは9時にピークがあり21時~0時に最低となった.F値はDHA値との間に有意な相関が見られたが, P5-S値, DHA-S値とは相関が見られなかった.次に正常妊婦2例 (12週, 30週) に末梢よりACTH (コートロシン (R) ) 0.25mgを投与した際の各ステロイドの反応性を検討したところ, ACTH投与により, DHAはFと共に速やかに上昇したが, P5-Sは軽度上昇, DHA-Sには変動は少なかった.以上より1) DHA-Sを除く測定した副腎性ステロイドすべてに日内変動が認められたがステロイドによってその変動は異なった.2) DHAとFはその日内変動に有意な相関を認め, かつ, ACTH投与による反応性が一致したことから, 両者は副腎より同一の産生機序で分泌されていることが推察された.3) DHA-S, P5-Sの日内変動パターンは, Fと異なり, またACTHによる反応性に差異が見られたことから, 副腎からの分泌様式はF, DHAのそれとは異なることが示唆された.
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