昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
慢性膵炎におけるERP像, EUS像と膵外分泌機能検査の関連性について
水野 健朗西田 均宮本 二一八田 善夫高橋 正一郎腰塚 浩
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 51 巻 6 号 p. 644-650

詳細
抄録

内視鏡的逆行性膵管造影 (ERP) , 超音波内視鏡 (EUS) , Caerulein-Secretin test (CS test) を施行した慢性膵炎症例43例, 正常対照13例において, ERP診断に基づいて慢性膵炎を分類し, EUS像の変化とCS test障害の程度を比較検討し, 画像診断と膵外分泌機能障害の程度の相関を検討した.なお, ERP診断は日本消化器病学会慢性膵炎検討委員会による臨床診断基準 (1983) に従い, これに加えて, 機能障害と比較するためには病変の広がりも考慮する必要があり, びまん性 (diffuse: D) と限局性 (local: L) に分類した.またCS testはERPと同一の診断基準に従い, 液量, 総アミラーゼ分泌量, 最高重炭酸塩濃度の三因子について検討し, 正常群CS (0) , 一因子障害群CS (1) , 二-三因子障害群CS (2-3) に分類した.EUS所見は膵内部エコーの異常, 膵辺縁の不整像, 主膵管の拡張, 壁不整像について検討した.この結果, 以下のような結論を得た.1) ERP診断とCS test結果とはERP所見を (L) , (D) に分類した場合でも必ずしも一致せず (特にERP所見が正常から中等度の場合) , 膵管変化と膵機能障害の程度とは平行しなかった.2) EUSでは, 慢性膵炎において膵管像の変化, 膵辺縁の不整像は高率に検出されたが, 正常例でも描出され, 慢性膵炎の特異性は少なかった.3) EUS所見の中でも内部エコーの異常は, CS test結果と高い相関関係を示し, 膵実質障害を反映するものと考えられた.4) 膵内部エコーの異常はCS test障害が進行するに従い, 点状高エコー像, 点状高エコー像と斑状低エコー像の混在像, びまん性低エコー像へと進行した.しかし明らかなCS test障害を惹起するのは点状高エコー像と斑状低エコー像の混在像を示す例およびびまん性低エコー像の例であった.5) 慢性膵炎におけるEUS診断は, 膵管の形態的変化, 膵辺縁の変化のみならず, 膵実質像の把握も可能であった.すなわち機能障害と相関し, また軽度膵炎でCS test障害を認めない場合でも点状高エコー像として膵の異常が確認できた.今後, 症例を積み重ね検討することにより, 臨床的に捉えられない時期の軽度膵炎の検出, ひいては慢性膵炎の初期変化の検討に有用となる可能性が示唆された.

著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top