成人腸重積の多くは癌などに起因する二次性で, 緩徐な腹痛を繰り返す例が見られることから, 幾度となく重積と自然整復を繰り返す場合が多いと推定されている.入院中に大腸内視鏡, 注腸および手術にてその病態がとらえられた成人腸重積症の1例を経験したので報告する.症例は間歇的腹痛を主訴とする61歳の主婦で, 近医での注腸にて盲腸癌を疑われ, 当科を受診した.腸重積の既往があり, 2年前より軽度の腹痛を繰り返していた.入院後の大腸内視鏡にて横行結腸に腫瘍が認められ, 造影剤の注入により蟹爪像が描出された.翌日の注腸では腫瘍は盲腸にあり, 重積は解除されていた.手術前夜より再び腹痛が出現し, 手術時, 癌腫を先進部とする三筒性の重積腸管を確認した.移動盲腸があり, 重積腸管には循環障害を認めず, 用手的に整復後, 右半結腸切除術を施行した.先進部となった癌腫は限局潰瘍型の高分化腺癌であった