昭和医学会雑誌
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癌巣内潰瘍を有する陥凹性早期胃癌の特性
熊谷 一秀安井 昭西田 佳昭増尾 光樹吉利 彰洋広本 雅之唐沢 洋一
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1992 年 52 巻 1 号 p. 33-38

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抄録

陥凹性早期胃癌は癌巣内潰瘍の消長による形態変化を観察することも稀れではないが, 多くは悪性病変としての診断は容易である.しかし皿型癌 (Hauser型潰瘍癌) は時に良性潰瘍との鑑別に苦慮した経過観察例も経験する.このHauser型潰瘍癌の陥凹性早期胃癌における位置づけを検討した.当科および関連施設で切除された癌巣内潰瘍 (瘢痕) を有する陥凹性早期胃癌136例 (: IIc+ (III) 型125例, III+ (IIc) 型11例) を対象とし, 癌巣内潰瘍の深さ, 占居分布, 占居腺領域などについて検討し, 以下の結果を得た. (1) III+ (IIc) 型癌の癌巣内潰瘍の深さはu1-IV9例, ul-III1例, ul-II1例, IIc+ (III) 型癌はu1-IIが78%と大部分を占めた. (2) 占居分布はIII+ (IIc) 型癌はM領域小轡に11例中9例と多く, IIc+ (III) 型癌はM領域に多いが, 前後壁に偏して占居するものが多かったが, 癌巣内潰瘍u1-IV例はM領域小轡に多く存在した. (3) 占居腺領域はIIc+ (III) 型癌は幽門腺領域が過半を占めたが, III+ (IIc) 型癌は中間帯領域および, その近傍癌が多かった.以上より, Ha-user型潰瘍癌は癌巣内潰瘍を有するIIc型癌と本質的には変らず, 占居分布の差, 癌巣内潰瘍の深さによる潰瘍の治癒度の差などにより特徴を現わすものと思われた.また, それらの診断にあたっては確実な生検はもとより, 経過観察においても潰瘍治癒過程における癌性再生上皮の認識が重要と思われた.

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