昭和医学会雑誌
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癌性腹膜炎におけるシスプラチン投与経路の検討
渡辺 公博石井 誠舩冨 等八田 善夫
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1992 年 52 巻 1 号 p. 87-92

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抄録

近年, 癌性腹膜炎に対しシスプラチン (cisplatinum: CDDP) の腹腔内投与 (ip) が試みられているが, その生体内薬物動態を知ることは効果の面からのみでなく, 副作用の面からも重要と思われる.今回我々は, CDDPの腹腔内投与と全身投与 (iv) 後の血中, 尿中および腹水中のCDDP濃度の変動を検討した.CDDPはip後に腹水中に高濃度に存在し, しかも血中にも十分量のCDDPが移行することから, 腹腔内での直接効果も期待できると思われた.また, この場合の副作用を抑制するためCDDP-ipにチオ硫酸ナトリウム (sodium thiosulfate: STS) を併用し血中, 腹水中のCDDP濃度をCDDP単独ipと比較検討したが, STS併用では血中遊離型CDDPは比較的早期に測定不能となるのに対し, 腹水中遊離型CDDPは比較的長時間存在した.これらのことから局所効果のみを期待する場合はSTSを併用し, 全身への効果も期待する場合は, 他の副作用抑制方法を考慮すべきと思われた.

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